ビタミンB12欠乏

内分泌

「大球性貧血」だけではない見逃されやすい疾患

ビタミンB12欠乏症は「巨赤芽球性貧血の原因」として学ぶことが多いように思います。

一方で実臨床では、

  • しびれ
  • 歩行障害
  • 認知機能低下
  • 原因不明のLDH高値
  • 汎血球減少

など、さまざまな形で遭遇しうるようです。

特に重要なのは、典型的な大球性貧血を伴わない症例があることです。

「MCV正常だから否定的」と考えると見逃しにつながります。

また、

  • メトホルミン内服
  • 胃切除後
  • PPI長期使用

など、日常診療で頻繁に遭遇する背景がリスクとなります。

今回は、実臨床で遭遇しやすいビタミンB12欠乏症について整理します。


✔️最初に押さえたいポイント

  • 巨赤芽球性貧血だけでなく神経障害を起こす
  • 「しびれ+貧血」は重要な組み合わせ
  • MCV正常でも否定できない
  • メトホルミン、PPI、胃切除後は要注意
  • 葉酸単独補充は神経障害を悪化させうる
  • 神経障害は不可逆となることがあり早期診断が重要

ビタミンB12とは

ビタミンB12(コバラミン)は、DNA合成と神経維持に重要な水溶性ビタミンです。

主な役割は、

  • DNA合成
  • ミエリン維持

です。

欠乏すると、

  • DNA合成障害 → 巨赤芽球性貧血
  • ミエリン障害 → 神経障害

をきたします。

特に神経症状を伴う点が、葉酸欠乏との重要な違いです。


吸収機序

ビタミンB12吸収には胃・膵・小腸が関与します。

  1. 胃酸により食事中B12が遊離
  2. ハプトコリンと結合
  3. 十二指腸で膵酵素により分解
  4. 内因子(Intrinsic factor)と結合
  5. 回腸末端で吸収

原因

吸収障害

実臨床では最も重要。

悪性貧血(自己免疫性胃炎)

自己免疫性胃炎により内因子が低下する。下記の抗体は悪性貧血の診断に必要ですが保険外になるため実際は内視鏡所見を元に疑診とすることも多いみたいです。

  • 抗内因子抗体
  • 抗壁細胞抗体

胃切除後

特に胃全摘後では頻度が高い。

薬剤

代表的なのは、

  • メトホルミン
  • PPI
  • H2 blocker

など。

特にメトホルミンは長期使用例でリスク上昇が知られています。

小腸疾患

  • Crohn病
  • 回腸切除
  • SIBO

など。

摂取不足

  • 極端な菜食
  • 低栄養
  • アルコール関連疾患

など。

ただしビタミンB12は肝臓に数年分蓄積されるため、単純な摂取不足のみで急速発症することは少ないみたいですね。


症状

血液学的所見

典型的には巨赤芽球性貧血。

  • MCV上昇
  • 汎血球減少
  • 網赤血球低下
  • 過分葉好中球

などを認めます。

また無効造血による髄内溶血のため、

  • LDH上昇
  • 間接Bil上昇

を伴うことがあります。

神経症状

  • 四肢しびれ
  • 深部感覚障害
  • 振動覚低下
  • 歩行障害

など。

進行すると亜急性連合性脊髄変性症をきたします。

糖尿病患者では「糖尿病性神経障害」と判断されていることもあり注意が必要です。

精神症状

  • 抑うつ
  • 易怒性
  • 認知機能低下
  • せん妄

など。

高齢者では認知症として扱われている場合もあります。


診断アプローチ

Step 1:まず疑う

以下をみたら鑑別に挙げます。

  • 大球性貧血
  • 原因不明の汎血球減少
  • LDH高値+間接Bil上昇
  • 四肢しびれ
  • 歩行障害
  • 高齢者の認知機能低下
  • 胃切除後
  • メトホルミン長期使用

特に「しびれ+貧血」は重要です。

Step 2:基本検査

まず行う検査:

  • CBC
  • MCV
  • 網赤血球
  • LDH
  • Bilirubin
  • VitB12
  • 葉酸

末梢血で過分葉好中球も参考となります。

Step 3:原因検索

重要なのは吸収障害。

確認する:

  • 胃切除歴
  • 萎縮性胃炎
  • 悪性貧血
  • 小腸疾患
  • 菜食
  • アルコール
  • メトホルミン
  • PPI

悪性貧血を疑う場合:

  • 抗内因子抗体
  • 抗壁細胞抗体

を追加する。

胃疾患が原因となりうるため必要症例(上部消化器管内視鏡歴がないなど)では上部消化管内視鏡を行います。

Step 4:境界域なら追加検査

VitB12境界域では、

  • ホモシステイン
  • メチルマロン酸(MMA)

を追加します。

特にMMA上昇はB12欠乏を支持します。


葉酸欠乏との違い

両者とも巨赤芽球性貧血を呈します。

しかし、

  • 神経症状はB12欠乏で特徴的
  • MMA上昇はB12欠乏でみられる

という違いがあります。

葉酸単独補充では、貧血のみ改善して神経障害が進行する可能性があるため注意が必要です。


治療

ビタミンB12補充

注射

重症例や吸収障害例では筋注あるいは静注を選択します。

内服

近年は高容量経口投与でも有効性が示されています。


治療後変化

  • 数日で網赤血球増加
  • 数週間でHb改善
  • 神経症状改善は遅れる

長期間放置例では神経障害が残存することがあります。


実臨床で感じるポイント

ビタミンB12欠乏は、「典型的な大球性貧血」で遭遇するよりも、

  • なんとなくしびれている
  • 原因不明のLDH高値
  • 微妙な汎血球減少
  • 歩きにくさ
  • 認知機能低下

など、“少し違和感がある症例”で遭遇することが多い印象があります。

特に高齢者や糖尿病患者では、他疾患として処理されていることも少なくないです。

「MCV正常だから違う」と考えず、疑うこと自体が重要な疾患だと思います。


まとめ

  • ビタミンB12欠乏は巨赤芽球性貧血+神経障害が特徴
  • 胃切除、萎縮性胃炎、悪性貧血、メトホルミン、PPIが重要原因
  • MCV正常でも否定できない
  • MMA上昇が診断に有用
  • 葉酸単独補充は危険
  • 神経障害予防のため早期診断が重要

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