カルシウム拮抗薬について

生活習慣病
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■1 作用機序

AIで作成した図で大変恐縮ですが,カルシウム拮抗薬の作用を示した図になります.大まかにはこの中での選択性がCa拮抗薬の中での作用の違いを生んでいると理解していいでしょう.

①血管平滑筋・・・L型カルシウムチャネル(CaV1.2)を介したCa²⁺流入阻害により血管平滑筋が弛緩し,末梢血管抵抗が低下します.

②作業心筋・・・心筋細胞でのL型カルシウムチャネルの阻害はCa²⁺誘発性Ca²⁺放出を減弱させ,陰性変力作用をもたらします.

③刺激伝導系・・・洞房結節・房室結節の細胞は活動電位の立ち上がりをL型カルシウムチャネルに依存しているため、Ca²⁺流入阻害により洞結節自動能が抑制され,房室伝導が遅延します.

■2 種類と適応(DHP系or非DHP系)

Ca拮抗薬は大きくジヒドロピリジン系と非ジヒドロピリジン系に分類されます.ジヒドロピリジン系は主に血管平滑筋に作用し降圧薬として使われます.一方で,非ジヒドロピリジン系は作業心筋や刺激伝導系への作用が大きく,主に抗不整脈薬として使われます.

ジヒドロピリジン系は種類が豊富であり,細かい使い分けが難しいです.アムロジピンやニフェジピンは古くから使用されている薬剤でエビデンスが豊富であり,心血管イベントなどのhard endpointを改善することも大規模臨床試験で示されています.実際日本の処方データでは上記2剤で80%のシェアを占めています.上述の薬剤は主にL型Caチャネルを阻害しますが,それに加えてN型CaチャネルやT型およびN型Caチャネルにも作用する薬剤もあります.これらの作用により糸球体内圧の低下や蛋白尿減少などの腎保護作用あったり,末梢浮腫の副作用が少ないとされたりという特色があります.詳しくは▪️6の表を参照ください.ただし,これらの薬剤がアムロジピンなどと比較して心血管イベントや腎不全進行といったhard endpointをより改善することは,大規模臨床試験では確立していません.

非ジヒドロピリジン系は,心筋や刺激伝導系への作用が比較的強く,心房細動をはじめとした頻脈性不整脈に対して使用されます.高血圧に対する降圧作用も有しますが,現在の実臨床で純粋な降圧目的に使用されることは比較的少ない薬剤です.また,陰性変力作用を有するため,左室収縮能が低下したHFrEFでは原則として使用を避けます.特にベラパミルやジルチアゼムの投与によって心拍出量が低下し,心不全を非代償化させる可能性があるため注意が必要です.

以下にCa拮抗薬の大まかな分類をまとめます.

Ca拮抗薬 大まかな分類
項目ジヒドロピリジン系(DHP)非ジヒドロピリジン系(非DHP)
主な作用部位血管平滑筋(末梢血管拡張作用が強い)心筋・洞房結節・房室結節(陰性変時・陰性変伝導作用が強い)
代表薬アムロジピン、ニフェジピン、シルニジピン、ベニジピン、アゼルニジピンベラパミル、ジルチアゼム
心拍数への影響反射性頻脈を来しやすい(特に短時間作用型)心拍数低下(徐脈作用)
房室伝導ほぼ影響なし抑制(房室ブロックのリスク)
心収縮力ほぼ影響なし〜軽度陰性変力作用あり(HFrEFでは回避)
代表的副作用下腿浮腫、動悸、頭痛、顔面紅潮便秘(特にベラパミル)、徐脈、房室ブロック
主な適応高血圧、血管攣縮性狭心症高血圧、労作性狭心症、心房細動のレートコントロール
心不全(HFrEF)での使用アムロジピンなど一部は安全性データあり陰性変力作用のため回避

■3 副作用

Ca拮抗薬に共通する主な副作用は頭痛,ほてり,低血圧.末梢浮腫などです.非ジヒドロピリジン系では徐脈や房室伝導障害,心拍出量低下等が加わります.

Jones KE, et al. Curr Issues Mol Biol. 2024;46:6315-6327. によくまとまっていましたので以下は同論文の内容をメインに記述しています.

上記の副作用の中で治療継続に最も影響する副作用は末梢浮腫のようです. Ca拮抗薬による末梢浮腫は,単純な体液貯留によって生じるものではありません.DHP系Ca拮抗薬によって細動脈側が強く拡張する一方で,静脈側の拡張はそれほど強くないため,毛細血管内圧が上昇し,水分が間質へ移動することで浮腫を生じます.そのため,この浮腫は必ずしも利尿薬で改善するようなvolume overloadとは異なります.これはよく言われることではありますが,Ca拮抗薬による浮腫が疑われる症例への利尿薬投与は処方カスケードにつながるため避けるべきでしょう.また,CCB関連浮腫は女性で多く,年齢,投与量,使用する薬剤なども発症リスクに関係するとされています. ACE阻害薬またはARBをDHP系Ca拮抗薬に併用すると,末梢浮腫の発生頻度が低下することが報告されています.これは,毛細血管後側の血管も拡張することで,毛細血管内圧の上昇が軽減されるためと考えられています. 

一方,non-DHP系Ca拮抗薬では,陰性変時作用および陰性変力作用により,徐脈や房室伝導障害,心拍出量低下を生じる可能性があります.特にβ遮断薬との併用では徐脈や房室ブロックに注意が必要であり,左室収縮能が低下した心不全では原則として使用を避けます.また,verapamilでは便秘が比較的多くみられます.そのほか,CCB全体に関連する副作用として,胃食道逆流症や歯肉増殖などが挙げられます. 

引用文献 

  1. Jones KE, et al. Curr Issues Mol Biol. 2024;46:6315-6327. 
  2. Liang L, et al. J Clin Hypertens. 2022;24:536-554.

■4 降圧治療の効果

降圧治療による心血管イベント抑制効果は,baseline cardiovascular riskに応じて絶対的なbenefit(ARR)が大きく異なります.平たく言うともともとリスクの高い人にこそきくぞ!ってことですね.

BPLTTC(Blood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration)によるLancet誌2014年のindividual patient data meta-analysisでは,5年間の主要心血管イベントリスクを4群(<11%,11–15%,15–21%,>21%)に層別化して解析しました.結果は以下の通りです.

降圧による心血管リスクへの効果
5年baseline riskARRNNT/5年
6.0%1.4%71
12.1%2.0%51
17.7%2.4%41
26.8%3.8%26

5年間のCVDリスクが約27%の高リスク患者では,約26人を5年間治療すれば1件の主要心血管イベントを予防できる計算になる一方,低リスク群(5年リスク約6%)では同様の治療でも71人を治療してようやく1件予防できるにとどまる.相対効果は一定でも絶対効果はリスク層で数倍異なります.なお,この解析における高リスク群は,高齢でSBP 160 mmHg前後,糖尿病や心筋梗塞・脳卒中などのCVD既往を有する高血圧患者のような患者群でした.

SPRINT二次解析による推計では,SBP <120 mmHgを目標とする強化降圧により,SBP <140 mmHgの標準治療と比べて,余命は50歳で約2.9年,65歳で約1.1年,80歳で約0.8年延長するとされています.

一方,こうした絶対リスク減少に基づく議論は主に中高年・短中期のリスク評価に基づくものであり,若年者では短期的なbaseline riskが低いためARRも小さく見積もられます.しかしCARDIA studyでは,若年期からの累積血圧曝露(cumulative BP)が高いほど将来のCVD発症(HR 1.73,95%CI 1.47–2.05),心不全,冠動脈疾患,脳卒中が多いことが示されています.血圧管理では短期的なARRのみでなく,生涯にわたる血圧曝露を減らすという視点も併せて重要なようです.高LDL血症と同じ考え方で良さそうですね.

■5 目的による使い分け

通常の本態性高血圧
長時間作用型DHP系Ca拮抗薬は主要な第一選択薬の一つです.中でもアムロジピンは使用経験が豊富で,心血管outcomeに関するエビデンスも多く蓄積されています.通常の高血圧治療では,まずアムロジピンを選択する場面が多いです.

薬物相互作用を少なくしたい場合
アムロジピンはCYP3A4の基質ではありますが,ベラパミルやジルチアゼムのような強いCYP3A4/P-gp阻害作用を有しません.そのため,多剤併用患者でも比較的使用しやすいCa拮抗薬です.”とりあえずアムロジピン”は大きく間違ってはいないようです.

VSA(冠攣縮性狭心症)
Ca拮抗薬はVSA治療の中心となる薬剤です.DHP系ではアムロジピン,ニフェジピン,ベニジピンなど,non-DHP系ではジルチアゼムやベラパミルが使用されます.単剤で不十分な難治例では,作用特性の異なるCa拮抗薬の併用が検討されます.β遮断薬は冠攣縮を増悪させる可能性があるため,VSA単独例では原則として単独使用を避けます.なかでもベニジピンは,VSA患者を対象とした日本の観察研究およびmeta-analysisで,ジルチアゼムなどと比較して心血管イベントが少ない可能性が報告されています.ただし,元となる研究は主に観察研究であり,RCTによってベニジピンの優越性が確立しているわけではありません.

腎保護を意識する場合
従来型L型Ca拮抗薬は輸入細動脈を優位に拡張する一方,エホニジピンなどのL/T型Ca拮抗薬やシルニジピンなどのL/N型Ca拮抗薬は輸出細動脈にも作用し,糸球体内圧を低下させる可能性があります.実際,シルニジピンではアムロジピンと比較して蛋白尿減少が大きかった報告があります.ただし,hard renal endpointで優れていることは確立していません.

適応症によるカルシウム拮抗薬の使い分け
適応選びやすいCa拮抗薬根拠
通常の本態性高血圧アムロジピン長時間作用型,使用経験・outcome evidenceが豊富
多剤併用・相互作用を避けたい場合アムロジピンCYP3A4/P-gp阻害作用が弱く,相互作用が比較的少ない
VSAベニジピンCCBが治療の中心.ベニジピンは観察研究/meta-analysisで良好な予後の可能性
蛋白尿・腎微小循環を意識する場合シルニジピン,エホニジピン輸出細動脈作用,蛋白尿減少の報告あり

■6 代表的薬剤の使い方

日本人高血圧患者を対象としたRCTでは,アムロジピン2.5 mgで約19/12 mmHg,5 mgで約26/16 mmHgの降圧が得られています.ただし,baseline BPが約161/100 mmHgと高い集団であり,降圧幅は治療前血圧によって変化します.大体の目安として意識しておくと良いでしょう.下記に代表的なCa拮抗薬の使い方について記載しています.ニカルジピン注も最後に追加しておきました.総じてCYP3A4の基質ですのでグレープフルーツジュースについての指導が必要です.

代表的Ca拮抗薬
薬剤商品名使い方向いている場面主な副作用代謝・相互作用
アムロジピンノルバスク®,アムロジン®高血圧:2.5–5 mg 1日1回→最大10 mg/日通常の本態性高血圧の第一候補.浮腫,頭痛,ほてり,動悸,低血圧主にCYP3A4で肝代謝.相互作用は比較的少ない
ニフェジピンCRアダラートCR®10–20 mg 1日1回から開始→通常20–40 mg/日,最大80 mg/日強めの降圧,VSA浮腫,頭痛,顔面紅潮,動悸,頻脈,低血圧CYP3A4.グレープフルーツ,CYP3A4阻害薬に注意
アゼルニジピンカルブロック®8 mg 1日1回朝食後から開始→最大16 mg/日頻脈を起こしたくない場合,緩徐な降圧頭痛,ほてり,浮腫,めまい,肝障害CYP3A4依存性が高い.強力なCYP3A4阻害薬に注意
シルニジピンアテレック®5–10 mg 1日1回朝食後→最大20 mg/日蛋白尿・CKDを意識する場合,浮腫が問題となった場合頭痛,ほてり,動悸,めまい,浮腫,低血圧主にCYP3A4,一部CYP2C19
ベニジピンコニール®高血圧:2–4 mg 1日1回朝食後→最大8 mg/日.狭心症:4 mg 1日2回VSAで選びやすい頭痛,動悸,顔面紅潮,浮腫,低血圧肝代謝.CYP3A4阻害,グレープフルーツに注意
エホニジピンランデル®20–40 mg/日から開始→最大60 mg/日腎微小循環や蛋白尿を意識する場合ほてり,動悸,頭痛,めまい,浮腫,徐脈肝代謝.相互作用に注意
ベラパミルワソラン®頻脈性不整脈:40–80 mg 1日3回SVT,AF rate controlなど徐脈,AV block,低血圧,心不全悪化,便秘CYP3A4/P-gpの基質かつ阻害薬.相互作用が多い
ジルチアゼムヘルベッサー®高血圧:徐放製剤100 mg 1日1回から→通常100–200 mg/日VSA,狭心症,徐脈化も必要な場合徐脈,AV block,低血圧,心不全悪化,浮腫CYP3A4/P-gp阻害作用あり
ニカルジピン静注ペルジピン®0.5 μg/kg/min程度から開始→通常0.5–6 μg/kg/min高血圧緊急症,周術期血圧管理頻脈,頭痛,顔面紅潮,低血圧,静脈炎CYP3A4関連.急速な血圧低下に注意

■7 まとめ

①カルシウム拮抗薬は大きくDHP系と非DHP系に分けられる.

②DHP系は主に降圧薬として,非DHP系は主に抗不整脈薬として用いられる.

③本態性高血圧ではエビデンスが豊富で相互作用も少ないアムロジピンが使いやすい.

④VSAに対してはニフェジピンやベニジピンが用いられる.

⑤代表的な副作用である浮腫は動脈選択性の高さ故に生じる.

⑥カルシウム拮抗薬が原因と考えられる浮腫に対する利尿薬投与は避け,カルシウム拮抗薬の変更や減量,ARB/ACEiの併用を考えた方が良い.

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